股関節の痛み

股関節は、骨盤と太ももの骨（大腿骨）をつなぐ、身体の中で最も大きな関節です。
大腿骨の先端にあるボール状の「大腿骨頭」が、骨盤側のお椀のような「寛骨臼」にはまり込む「球関節」と言う構造をしています。
この精巧な作りのおかげで、私たちは脚を前後左右、回すなど、非常に広範囲に動かすことができます。

また、股関節は立つ、歩く、走るといった動作の際に上半身の重みを支える土台としての役割も担っており、歩行時には体重の3〜4倍もの負荷がかかると言われています。
この重要な関節の骨や軟骨、あるいは周囲の筋肉や靭帯に何らかの問題が生じることで、「痛み」と言うサインが現れるのです。

長年の負荷や体重増加により、クッションの役割を果たす軟骨がすり減り、骨同士がぶつかって痛みや炎症が起こります。

特に骨盤のゆがみは股関節の位置を微妙にずらし、関節に偏った負荷をかけてしまいます。
デスクワークでの偏った座り方（足を組む、片側重心で座るなど）が原因となることも少なくありません。

運動不足や悪い姿勢が続くと、股関節を支えるお尻や体幹の筋肉（インナーマッスル）が弱くなります。
すると、関節が不安定になったり、一部の筋肉に過剰な負担がかかったりして痛みを引き起こします。

長時間の同じ姿勢は、股関節まわりの血行を悪化させ、筋肉を硬くして痛みの原因となります。
特に座りっぱなしの姿勢は股関節前面の筋肉を縮こまらせ、血流を阻害します。

スポーツなどで股関節に繰り返しストレスがかかることで、筋肉や腱、関節唇（関節の縁にある軟骨）などを傷つけてしまうことがあります。

股関節痛の最も一般的な原因で、関節軟骨がすり減っていくことで痛みや関節の変形が起こる病気です。
日本では、生まれつき股関節の骨盤側の被りが浅い「寛骨臼形成不全」が原因で発症する二次性のものが8割以上を占めます。

初期症状

立ち上がりや歩き始めに足の付け根が痛むが、少し動くと楽になる。

進行期

歩行時や階段の昇降時に痛みが持続する。
靴下を履く、足の爪を切るといった動作が困難になる。

末期

じっとしていても痛む（安静時痛）、夜中に痛みで目が覚める（夜間痛）といった症状が現れ、歩行が著しく困難になります。

特に40代〜50代の女性に多く、若い頃は無症状でも、加齢や体重増加、筋力低下をきっかけに発症することがあります。

大腿骨頭への血流が滞り、骨の組織が死んでしまう（壊死）病気です。
体重の負荷によって壊死した部分が潰れる（圧壊）と、突然激しい痛みに襲われるのが特徴です。
ステロイド剤の多用やアルコールの多飲がリスク因子とされていますが、原因不明のことも少なくありません。
比較的若い30代〜50代の男性に多い傾向があります。

骨の形態的な異常により、股関節を深く曲げたときなどに骨同士が衝突（インピンジメント）し、関節唇や軟骨を傷つけてしまう状態です。
サッカーやバレエなど、足を大きく動かすアスリートや若年層に多く見られます。
足の付け根の鋭い痛みや「ゴリッ」と言う引っかかり感が特徴です。

大転子部痛症候群（GTPS）

股関節の外側、骨の出っ張り（大転子）あたりに痛みが生じます。
痛い方を下にして横になると痛みが強くなるのが特徴で、中殿筋などの腱の炎症や、その下にある滑液包（かつえきほう）と言う潤滑袋の炎症（滑液包炎）が主な原因です。

梨状筋症候群

お尻の深い部分にある梨状筋が硬くなることで、その下を通る坐骨神経を圧迫し、お尻や太ももの裏側に痛みやしびれを引き起こします。
長時間座っていることの多いデスクワーカーによく見られる症状です。

変形性股関節症などの疾患は進行性であり、軟骨は一度すり減ると自然には再生しません。
放置すればするほど関節の破壊は進み、安静にしていても痛むようになり、日常生活に深刻な支障をきたします。

股関節が痛いと、無意識に痛い脚をかばって歩くようになります（跛行）。
この異常な歩き方は、反対側の股関節や膝、そして腰にまで過剰な負担をかけ、新たな痛みを引き起こす原因となります。

痛みを避けて動かさないでいると、股関節まわりの筋肉はどんどん衰えていきます（筋萎縮）。
筋肉と言う「天然のコルセット」が弱ることで関節はさらに不安定になり、痛みも増すと言う悪循環に陥ります。
同時に関節の動く範囲も狭くなり（拘縮）、ますます動かしづらくなります。

特に寛骨臼形成不全などを抱える若い方の場合、痛みを我慢しすぎると軟骨の摩耗が進行してしまいます。
その結果、本来であれば自分の関節を温存できる「骨切り術」などの手術のタイミングを逃し、人工関節しか選択肢がなくなってしまうケースもあります。

股関節の痛みは、単なる不快な症状ではなく、あなたの身体が発している重要な警告サインです。
そのサインに早期に気づき、正しく対処することが、将来のQOL（生活の質）を維持するために極めて重要です。

多くのマッサージや整体が、痛む場所だけを揉みほぐす対症療法に留まっているのに対し、私たちは「なぜそこに痛みが出ているのか？」と言う根本原因の追究を何よりも重視します。

身体の不調の多くは、「骨格のゆがみ」と「筋肉のアンバランス」に起因します。
私たちの役割は、国家資格を持つ身体のプロとして、専門的な検査によってあなたの身体のどこに問題が隠れているのかを正確に見つけ出し、「骨格」と「筋肉」の両面からアプローチすることで、身体を本来あるべき正常な状態へと導くことです。

当院では、一人ひとりの身体の状態に合わせたオーダーメイドの施術プランをご提供します。

徹底した原因検査

まずはカウンセリングで、いつから、どのような時に、どこが痛むのかを詳しくお伺いします。
その後、姿勢の分析や関節の可動域チェック、筋力テストなど、多角的な検査を行います。
当院では、筋肉量や左右の筋バランスを客観的なデータで分析する機器も導入しており、痛みの根本原因を徹底的に特定します。

骨格調整（骨盤矯正）

股関節の土台となる骨盤のゆがみは、股関節への負担を増大させる最大の要因の1つです。
当院独自のソフトな骨盤矯正で骨格のアライメントを正常な位置に戻し、股関節にかかる負担を均等にしていきます。

深層筋調整

痛みの原因となっている硬くなった筋肉や、逆にうまく使えていない弱い筋肉を特定し、専門的な手技で調整します。
特に、身体の深層部にあって骨盤や股関節を安定させるインナーマッスルへのアプローチを重視しています。

先進電気治療器によるアプローチ

手技だけでは届かない身体の深層部には、最新の電気治療器を組み合わせてアプローチします。

ハイボルテージ治療

プロアスリートも使用する特殊な電気治療器で、痛みの原因となっている深層部の組織に直接アプローチします。
痛みを増幅させている神経の興奮を抑え、高い鎮痛効果と治癒促進効果が期待できます。
「どこに行っても痛みが取れない」と言う方にこそ、体験していただきたい施術です。

楽トレ（EMS）

骨格を支える「インナーマッスル」は、自分で鍛えるのが非常に難しい筋肉です。
当院の「楽トレ」は、複合高周波EMSと言う特殊な電気を用いて、ベッドに横になっているだけで深層筋を効率的にトレーニングできます。
弱ったインナーマッスルを強化することで、骨格が安定し、痛みの出にくい身体の土台を作り上げます。

これらの施術を組み合わせることで、急性の強い痛みを取り除くだけでなく、痛みを繰り返さないための根本的な身体改善を目指します。

股関節の痛みは、姿勢の崩れや筋力低下、日常生活での負担などによって徐々に起こることが多く、慢性的な症状として扱われるため、接骨院での施術は原則として健康保険の適用外となります。

しかし、転倒・スポーツ中の負傷・急な動作による痛みなど、
原因が明確な急性のケガ（捻挫・打撲・挫傷など）によって股関節周辺に痛みが出た場合には、保険が適用されるケースがあります。

当院では、症状の出方や負傷の経緯をしっかり確認し、
・保険適用の可否のご案内
・必要に応じた医療機関との連携
をスムーズに行える環境を整えております。

「股関節の痛みでも保険が使えるの？」と疑問をお持ちの方も、ぜひ一度ご相談ください。患者様にとって最適な施術をご提案いたします。

デスクワークの合間に、固まった股関節まわりをほぐしましょう。

お尻のストレッチ

1.椅子に浅く腰掛け、背筋を伸ばします。
2.片方の足首を、反対側の膝の上に乗せます。
3.背中が丸まらないように注意しながら、ゆっくりと上半身を前に倒します。
4.お尻の筋肉が伸びるのを感じながら20〜30秒キープし、反対側も同様に行います。

股関節の内側ストレッチ

1.椅子に座ったまま、片方の足首を反対側の膝の上に乗せます。
2.乗せた脚の膝を、手でゆっくりと床の方向へ押し下げます。
3.股関節の内側が気持ちよく伸びる範囲で20〜30秒キープします。
反対側も同様に行います。

股関節回し

1.椅子に背筋を伸ばして座り、片方の膝を少し持ち上げます。
2.股関節を軸に、膝で円を描くようにゆっくりと回します。
3.内回し・外回しをそれぞれ5〜10回ずつ行い、反対側も同様に行います。

お風呂上がりなど、身体が温まっている時に行うのがおすすめです。

足の付け根（股関節屈筋群）
のストレッチ

1.片膝を立てて座り、もう片方の脚は後ろに伸ばします（ランジの姿勢）。
2.背筋を伸ばしたまま、ゆっくりと体重を前に移動させます。
3.後ろに伸ばした脚の付け根が伸びているのを感じながら、20〜30秒キープします。
反対側も同様に行います。

お尻上げ（ブリッジ）

1.仰向けに寝て、両膝を90度くらいに立てます。足は肩幅に開きます。
2.お尻に力を入れ、肩から膝までが一直線になるように、ゆっくりと腰を持ち上げます。
3.その位置で5秒キープし、ゆっくりと下ろします。10回程度繰り返します。

椅子に深く腰掛け、足裏全体が床につくように高さを調整します。
膝が股関節より少し低くなるのが理想です。
浅く腰掛けて背もたれに寄りかかる姿勢は避けましょう。

最低でも30分〜1時間に一度は立ち上がり、少し歩いたり、軽く伸びをしたりして、同じ姿勢を続けないようにしましょう。
タイマーをセットするのもおすすめです。

足を組むと骨盤がゆがみ、左右の股関節に不均等な負荷がかかります。
意識して足を組まないようにしましょう。

体重を1kg減らすと、歩行時の股関節への負荷は3〜4kg減ると言われています。
バランスの取れた食事と適度な運動で、適正体重を維持しましょう。

床に直接座る（あぐら、正座）、和式トイレ、布団での寝起きなどは股関節に大きな負担をかけます。
できるだけ椅子やベッド、洋式トイレを使用する生活を心がけましょう。