捻挫・腱炎・腱鞘炎

捻挫は、関節が許容範囲を超えて強制的に動かされた結果、骨と骨をつなぐ「靭帯（じんたい）」が伸びたり、断裂したりするケガです。
スポーツ中のジャンプ着地の失敗や、階段の踏み外しといった突発的な外傷が原因で起こります。

捻挫は靭帯の損傷度合いによって、3段階の重症度に分類されます。

I度（軽症）

靭帯が一時的に伸びている状態（微細な断裂）。
軽い痛みや腫れはありますが、関節の不安定性（ぐらつき）はありません。

II度（中等症）

靭帯が部分的に断裂している状態。
痛みや腫れ、皮下出血（あざ）がみられ、関節に若干の不安定性が生じます。

III度（重症）

靭帯が完全に断裂している状態。
激しい痛みと著しい腫れを伴い、関節が明らかに不安定になります。
多くの場合、体重をかけることができません。

腱炎は、筋肉と骨をつなぐ「腱（けん）」そのものが、使いすぎ（オーバーユース）によって微細な損傷や炎症を起こす状態です。
ランニングによるアキレス腱炎や、ジャンプ動作の繰り返しによるジャンパー膝（膝蓋腱炎）などが代表的です。

腱鞘炎は、腱を包み、スムーズな動きを助けるトンネル状の組織「腱鞘（けんしょう）」が炎症を起こす状態です。パソコンのタイピングやスマートフォンの操作など、手首や指の反復的な動作によって腱と腱鞘がこすれ合い、痛みや動かしにくさを引き起こします。

ドケルバン病（狭窄性腱鞘炎）

手首の親指側で起こる腱鞘炎。
物を掴んだり、瓶の蓋を開けたりする動作で、親指の付け根に鋭い痛みが走ります。
スマートフォンの長時間使用が原因となることもあります。

ばね指（弾発指）

指の付け根で起こる腱鞘炎。
炎症で厚くなった腱が腱鞘に引っかかり、指を伸ばそうとすると「カクン」とばねのように弾ける現象が起こります。

捻挫 (Sprain)

損傷組織：靭帯（骨と骨を連結）
主な原因：急性の外傷、突然の過伸展
発症様式：突発的で、ケガの瞬間が明確
好発部位：足関節、膝、手関節、指

腱炎 (Tendinitis)

損傷組織：腱（筋肉と骨を連結）
主な原因：慢性のオーバーユース（使いすぎ）
発症様式：緩やかで、いつの間にか痛くなる
好発部位：肩、膝、踵（アキレス腱）

腱鞘炎 (Tenosynovitis)

損傷組織：腱鞘（腱を包むトンネル）
主な原因：慢性のオーバーユース（使いすぎ）
発症様式：緩やかで、特定の反復作業と関連
好発部位：手首/母指（ドケルバン病）、指（ばね指）

これらの症状は、スポーツ中のアクシデントや仕事での手の使いすぎなど、直接的なきっかけで発症します。
しかし、より根本的な原因として「身体のゆがみ」が隠れていることが少なくありません。

例えば、骨盤がゆがんでいると、左右の足にかかる体重がアンバランスになります。
その状態で歩いたり走ったりすると、片方の足首にばかり過剰な負担がかかり、捻挫を起こしやすくなります。
これは、身体が本来持つバランス能力が崩れているサインです。

また、デスクワークで猫背の姿勢が続くと、肩が内側に入り、首から腕、手首へとつながる筋肉や神経が常に緊張状態になります。
この血行が悪い状態でパソコンのキーボードやマウスを操作し続けると、通常なら問題にならないような負荷でも腱や腱鞘に炎症が起こり、腱鞘炎を発症しやすくなるのです。

つまり、痛みが出ている局所的な問題だけでなく、その背景にある身体全体の構造的なアンバランス（ゆがみ）に目を向けることが、根本的な解決と再発予防のために不可欠なのです。

II度（中等症）以上の捻挫を放置すると、靭帯が伸びたまま治癒してしまい、関節がグラグラする「慢性足関節不安定症」に移行することがあります。
これは「捻挫ぐせ」として知られ、わずかな段差でも捻挫を繰り返すようになります。
この再負傷の連鎖は、関節の軟骨を傷つけ、若くして「変形性足関節症」へと進行するリスクを大幅に高めてしまいます。

腱の炎症を放置したまま負荷をかけ続けると、組織が変性してもろくなり、最終的には部分断裂や完全な「腱断裂」に至るリスクが劇的に増加します。
特にアキレス腱炎の放置は、アキレス腱断裂の大きな危険因子です。

腱鞘炎が進行すると、指が曲がったまま伸びなくなったり、その逆で伸びたまま曲がらなくなったりする「拘縮」と言う状態に陥ることがあります。
拘縮は手の機能を著しく損ない、回復には手術が必要となる場合も少なくありません。

これらのリスクを回避するためには、症状が出た初期段階で適切な検査と処置を受けることが極めて重要です。

医師が診察を行い、レントゲンやMRIなどの画像検査、投薬、注射、手術といった医療行為を行います。
「骨折の疑いがある（激しい痛み、明らかな変形、全く動かせない）」「手術が必要かもしれない重度の損傷」「薬や注射による施術を希望する」といった場合は、まず整形外科を受診しましょう。

柔道整骨師が、手技療法や物理療法（電気治療など）を用いて、骨格のゆがみや筋肉のバランスを整えます。
「レントゲンで異常なしと言われたが痛みが続く」「身体のゆがみが原因な気がする」「捻挫ぐせや痛みを根本から改善し、再発を予防したい」といった場合に適しています。

当院では、国家資格を持つ身体のプロが、身体の構造と機能の両面からアプローチし、根本改善を目指します。

私たちの施術の根幹にあるのは、「身体の不調の根本原因は“身体のゆがみ”にある」と言う考え方です。
骨格と筋肉を本来あるべき正常な状態に戻すことで、痛みを取り除くだけでなく、美しい姿勢を作り、不調が再発しにくい身体へと導きます。
「腕が良ければ時間をかける必要がない」と言う哲学のもと、国家資格を持つ身体のプロが、短時間で最大の効果を出すことにこだわっています。

原因検査で見つかった課題に応じて、最適な施術をオーダーメイドで組み合わせて提供します。

骨格・骨盤矯正

身体の土台である骨盤や、柱である背骨のゆがみを整えることで、身体全体のバランスを正常な状態に戻します。
これにより、特定の関節や筋肉にかかっていた過剰な負担を根本から取り除きます。

ハイボルテージ療法

急性の強い痛みに対しては、高電圧の電気刺激を身体の深層部まで到達させる「ハイボルテージ」と言う特殊な電気治療器を使用します。
痛みの原因となっている神経の興奮を直接鎮めることで、驚くほどの即効性を発揮します。
プロスポーツ選手のケアにも用いられる先進技術です。

楽トレ（EMSトレーニング）

痛みの根本改善と再発予防に不可欠なのが、身体を支える深層筋（インナーマッスル）の強化です。
当院の「楽トレ」は、複合高周波EMSと言う特殊な電気で、自分では鍛えるのが難しいインナーマッスルを、ベッドに横になっているだけで効率的に鍛えることができます。

これらの施術を組み合わせることで、急な痛みを取り除き（ハイボルテージ）、身体のゆがみを整え（骨格矯正）、ゆがまないための筋力をつける（楽トレ）と言う、理想的なアプローチで根本改善を実現します。

捻挫・腱炎・腱鞘炎といった症状は、スポーツや仕事中の負担、日常生活での急な動作など、原因がはっきりしている急性のケガとして扱われることが多く、接骨院での施術は健康保険の適用対象となります。

ただし、長期間にわたる慢性的な痛みや、明確な負傷原因がない場合は、健康保険の適用外となるケースもあります。

当院では、症状が出た背景や負傷の状況を丁寧に確認し、
・保険適用の可否の判断
・必要に応じた医療機関との連携
を適切に行っております。

「これは保険が使える症状なのかな？」と迷われる方も、どうぞお気軽にご相談ください。お一人おひとりに最適な施術をご案内いたします。

かつてはRICE処置（安静・冷却・圧迫・挙上）が主流でしたが、現在はより積極的な回復を促す「PEACE & LOVE」アプローチが推奨されています。

PEACE（受傷後数日間）

Protection（保護）：患部を悪化させる動作を避ける
Elevation（挙上）：患部を心臓より高く保つ
Avoid Anti-inflammatories（抗炎症薬の回避）：治癒に必要な炎症を妨げない
Compression（圧迫）：腫れを抑える
Education（教育）：自分の状態を正しく理解する

LOVE（急性期を過ぎてから）

Load（負荷）：痛みのない範囲で適切な負荷をかける
Optimism（楽観）：前向きな気持ちで回復に取り組む
Vascularization（血流促進）：有酸素運動で血流を促す
Exercise（運動）：筋力やバランス能力を回復させる

手首のストレッチ（腱鞘炎向け）

腕を前に伸ばし、もう片方の手で指を手前にゆっくりと引き、手首の筋肉を伸ばします。

ふくらはぎのストレッチ（捻挫・アキレス腱炎向け）

壁に手をつき、足を前後に開きます。
後ろ足のかかとを床につけたまま膝を伸ばし、ふくらはぎを心地よく伸ばします。

片足立ち（捻挫の再発予防）

平らな床で片足立ちをキープします。
ふらつかなくなったら、目を閉じて行うとさらに効果的です。
関節の位置感覚を再教育し、捻挫ぐせを防ぎます。

デスク環境の見直し

手首が自然な位置に保てるキーボードやマウスを選び、椅子の高さを調整するだけで、腱鞘炎のリスクを大幅に減らせます。

ウォーミングアップとクールダウン

運動前には軽いジョギングなどで筋肉を温め、運動後にはストレッチで使った筋肉をクールダウンさせる習慣をつけましょう。

適切な靴を選ぶ

クッション性の高い靴や、自分の足に合った靴を選ぶことは、足首への負担を軽減し、捻挫の予防につながります。