腰痛

腰痛とは、医学的には「第2・第3腰椎から臀部にかけての領域に生じ、24時間以上持続する痛み」と定義されます。
日本の国民生活基礎調査では、腰痛は身体の不調を訴える人の割合で最も高く、多くの人々が悩まされていることがわかっています。
多くの人が経験する症状ですが、その背景には様々な原因が隠れています。
自身の状態を正しく理解することが、適切な対処への第一歩となります。

レントゲンやMRIなどの画像検査で原因が特定できる腰痛で、全体の約15%を占めます。
代表的な疾患には以下のようなものがあります。

腰椎椎間板ヘルニア

背骨のクッションである椎間板が突出し、神経を圧迫する疾患です。
お尻から足にかけての鋭い痛みやしびれ（坐骨神経痛）を伴うことが特徴です。

腰部脊柱管狭窄症

加齢などにより神経の通り道である脊柱管が狭くなり、神経を圧迫します。
しばらく歩くと足が痛くなり、少し休むとまた歩けるようになる「間欠跛行」という症状が特徴的です。

骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折

骨がもろくなる骨粗鬆症が原因で、背骨が潰れてしまう骨折です。
高齢の女性に多く見られます。

画像検査では明確な原因が見つからない腰痛で、腰痛全体の約85%がこれに分類されるといわれてきました。
しかし、「腰痛の85%は原因不明」という言葉に、自分の痛みは解決しないかもしれないと不安になる必要はありません。

近年の研究では、画像検査だけに頼らず、専門家が詳細な問診や身体診察を行うことで、痛みの原因となっている可能性のある部位を特定できるケースが非常に多いことがわかっています。
ある研究では、最終的に原因が特定できない「真の非特異的腰痛」は22%程度まで減少するという報告もあります。
これは、あなたの痛みが「原因不明の謎」なのではなく、丁寧な臨床評価によって診断可能であることを示唆しています。

当院が「原因検査」を重視するのも、まさにこの考え方に基づいています。
非特異的腰痛の主な要因には、以下のようなものが複雑に絡み合っています。

筋・筋膜性腰痛

長時間の不適切な姿勢や急な運動により、腰を支える筋肉や筋膜が傷ついたり、過度に緊張したりして起こる痛みです。

不良姿勢と長時間の同一姿勢

特にデスクワークなどで長時間悪い姿勢を続けると、特定の筋肉に負荷が集中し、血行不良や筋肉の硬直を引き起こします。
立っている時よりも座っている時の方が、腰椎への負担は大きいとされています。

運動不足

体を支える体幹の筋力（特にインナーマッスル）が低下すると、背骨を適切に支えきれず、腰への負担が増大します。

肥満

体重が増加すると、物理的に腰椎への負荷が増えます。
特に腹部の脂肪は体の重心を前に移動させ、バランスを取るために腰を反らせる姿勢（反り腰）になりやすく、腰痛の大きな原因となります。

心理社会的要因（ストレス）

精神的なストレスは、無意識に全身の筋肉を緊張させ、腰痛を引き起こしたり悪化させたりします。
また、痛みが長引くことへの不安や恐怖感が、さらに痛みを慢性化させる悪循環につながることもあります。

発症から4週間未満の腰痛を指します。
「ぎっくり腰」のように突然激しい痛みに襲われるのが特徴で、多くは自然に軽快する傾向があります。

発症から4週間以上3ヶ月未満続く腰痛です。
この時期は、痛みが慢性化するかどうかの重要な分岐点とされています。

痛みが3ヶ月以上にわたって持続する状態です。
自然に治ることが少なく、身体的な要因だけでなく、心理的・社会的な要因が複雑に関与していることが多いのが特徴です。

「いつものことだから」と腰痛を放置していると、痛みが慢性化し、生活の質を著しく低下させる可能性があります。
さらにごく稀ですが、腰痛の背後には腫瘍や感染症といった緊急性の高い重篤な疾患が隠れている場合があります。
以下のような「レッドフラッグ（危険信号）」が一つでも見られる場合は、自己判断せず、速やかに医療機関を受診してください。

・安静にしていても、どんな姿勢をとっても痛みが軽くならない、または悪化する
・夜間に痛みが強くなり、目が覚めてしまう（寝返りによる痛みを除く）
・原因不明の発熱や体重減少を伴う
・足のしびれや脱力感が進行している、または両足に症状が及んでいる
・尿が出にくい、漏れる、または便意を感じない、漏れるといった排尿・排便の異常がある

痛みとは、身体の「歪み」が発する悲鳴です。
特に現代社会では、体の奥深くにあるインナーマッスルが弱化し、使われなくなっていることが、この「歪み」の根本原因となっています。
私たちは、その場しのぎの対症療法ではなく、高精度な検査機器で痛みの根本原因を正確に特定し、身体の「軸」を整えることを最優先に考えます。
このアプローチは、単に痛みを消すだけでなく、身体が本来持つ機能を取り戻し、痛みのない未来を築くためのものです。

痛みの部位や発生時の状況、日常生活での姿勢、仕事内容などを詳しくヒアリングし、腰痛の根本原因を特定します。
姿勢矯正、EMS、栄養指導などを組み合わせたオーダーメイドのプランを提案します。
まず、手技で骨盤や背骨の歪みを整え、次にEMSで姿勢を支えるための筋肉を強化します。
施術効果を持続させるため、自宅でできるストレッチ、正しい座り方、栄養管理などについて具体的なアドバイスを行います。

急な動作で痛めた「ぎっくり腰」などの急性的な外傷性の痛みに対しては、健康保険が適用される場合があります。
一方で、長期間続く慢性的な腰痛や、明らかな原因のない体の歪みに起因する腰痛は、自費施術の対象となります。
ご自身の症状が保険適用の対象となるかご不明な場合は、お気軽にご相談ください。
専門のスタッフが丁寧にご説明いたします。

痛みが激しい発症直後（～48時間）は、炎症を抑えることが最優先です。

冷却（アイシング）

患部に熱感がある場合、氷嚢などをタオルで包み、15～20分程度冷やします。
この時期に温めるのは避けるべきです。

楽な姿勢での安静

横向きで膝の間にクッションを挟むなど、最も痛みが楽な姿勢で休みます。
ただし、痛みが少し和らいだら、無理のない範囲で少しずつ動かし始める方が、回復が早いとされています。

痛みが落ち着いてきたら、硬くなった筋肉をほぐすストレッチを取り入れましょう。

膝抱えストレッチ

仰向けに寝て、両膝をゆっくりと胸に引き寄せ、両手で抱えます。
腰からお尻の筋肉が心地よく伸びるのを感じながら、深い呼吸で15～30秒キープします。

キャット＆ドッグ

四つん這いになり、息を吐きながら背中を丸め（猫のポーズ）、息を吸いながら背中を反らせます（犬のポーズ）。
背骨全体の柔軟性を高めます。

ハムストリングスストレッチ

仰向けに寝て、片方の足裏にタオルをかけ、膝をゆっくり伸ばします。
太ももの裏が硬いと骨盤が後ろに傾き、腰に負担がかかりやすくなります。

椅子に深く腰掛け、背もたれに背中をつけます。
足裏全体が床につき、膝の角度が90度になるように高さを調整しましょう。
骨盤を立てることを意識し、腰と背もたれの間にクッションや丸めたタオルを挟むのも有効です。

睡眠は、日中に受けたダメージを修復するための重要な時間です。
体に合わない寝具は、回復を妨げる原因になります。

マットレス

柔らかすぎて腰が沈み込むものや、硬すぎて腰とマットレスの間に隙間ができてしまうものは避けましょう。
背骨の自然なS字カーブを保ち、スムーズに寝返りが打てる適度な硬さのものが理想です。

寝姿勢

仰向けの場合は膝の下に、横向きの場合は膝の間にクッションを入れると、腰への負担が和らぎます。
うつ伏せ寝は腰を反らせるため、避けた方が良いとされています。

体重管理

過体重、特に腹部の脂肪は腰椎への物理的な負荷を直接増加させます。
適正体重を維持することは、腰痛予防の基本です。

栄養

骨の健康を維持するためにカルシウムやビタミンD、筋肉の材料となる良質なタンパク質の摂取を心がけましょう。